恋って相手を奪いたいもの?相手を自分の中に取り込みたいって感じたこと無い?
俺の心の中に相手の身体も心も融合するって?身体が溶け合い、心がひとつになる・・・
って信じられた時、恋ってすごく辛くて、そしてすごく暖かくて、もどかしい。
お前なしじゃ生られなくて、でも、世界にお前だけ居ればいいって存在。
すべてだったと感じられる。そんな非現実的な心の恋の話。

〜時を告げるもの〜

『よほど大事にしておられるのでしょう。』
そう告げられた言葉は、俺を喜ばせた。
腕時計の修理だった。
革のベルトのアナログ時計。
曜日も日付も無い。時間だけを刻む。
十数年も前の安物だ。
実際、ベルト交換や修理で買った値段のかるく三倍はかかってる。
だけど大事にしているわけじゃない。
本当に壊れないから使ってるだけだ。

『信じてるの?』
誰かが言う。
違うって俺が気に入ってるんだよ。
そうなんだ。もともと人と同じのは嫌なんだ。
変わったデザイン。

お前の17のBirthday ペアになった腕時計。
かわいいと言ってくれたお前。

なぜあんなにまで長い時間抱き合った?
痛がるほどにきつく抱きしめても、
俺の心は伝わってるの?
お前の心とひとつになれない。
どうすれば?どうすれば?
昼休みも放課後も誰も居ない部室。

心はいつもお前だけで満たされて。
俺のすべてが俺の心の中のお前を中心に動いていた。
青春と呼ばれた日々

歯車が欠けた19の冬。
欠けたままの歯車で、時間を合わせながら生きてきた。
このまま現実の腕時計は時を刻んでいく。
俺の心は正確な時間を刻むことなく。
いつの日か本当に壊れてしまうだろう。
その時は新しい腕時計を探すさ。
俺が時を告げるものを必要とするなら。な。

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